国勢調査の結果は表のまま見ると少し無機質に見える。地図にしてみると、数字だけでは気づきにくい地域差が浮かび上がる。
今回は総務省統計局が公表した「令和7年国勢調査 人口速報集計結果」をもとに、都道府県別の人口増減率を地図で可視化した。赤が濃いほど2020年から2025年にかけて人口減少率が大きいことを示している。一方、青は人口が増加した都県である。
地図を眺めると人口減少が日本のほとんどの地域で起きていることがわかる。人口増加が確認できる地域は限られている。
この地図では「人口増減率」と「世帯数増減率」を切り替えて見ることができる。人口が減少している地域でも、世帯数の減少幅は異なることが多い。人口は「人の数」、世帯数は「暮らしの単位」と考えると、両方を見比べることで、地域の変化を少し立体的に捉えることができるだろう。
今回使用している値は、令和7年国勢調査の人口速報集計である。人口速報集計は市区町村から提出された要計表をもとに、男女別人口と世帯数を早期に集計したもので、後日審査を経て公表される確定値とは必ずしも一致しない場合がある。また、2020年から2025年の増減数・増減率を計算する際の2020年人口および世帯数は、2025年の境域により組み替えられた値が使われている。
ここからは速報値をもとに、まず全国の人口増減の姿を地図で確認し、そのうえで福島県の現在地を見ていく。
人口減少は、より広い地域に及んでいる
令和7年国勢調査の人口速報集計によると、2025年10月1日現在の日本の総人口は1億2,304万9,524人である。2020年の前回調査と比べると、309万6,575人の減少、率にして2.5%の減少となった。日本の人口は2010年をピークに減少に転じているが、今回の速報値からは、その減少がよりはっきりと広がっていることがわかる。
都道府県別に見ると、人口が増加したのは東京都と沖縄県の2都県のみである。その他の45道府県では人口が減少している。地図で見ると、多くの地域が赤く表示され、人口増加がかなり限られた地域に集中していることが直感的にわかる。
市町村単位で見ても人口減少の広がりは明確である。全国1,719市町村のうち、人口が増加したのは161市町村で、全体の9.4%にとどまる。一方、人口が減少した市町村は1,558市町村で、全体の90.6%を占めた。さらに、10%以上人口が減少した市町村も全体の27.7%にのぼっている。
一方、世帯数は人口とは少し違う動きを示している。全国の世帯数は5,712万5千世帯で、1世帯当たり人員は2.15人となり、引き続き減少している。つまり、日本全体では人口が減少する一方で、世帯の小規模化が進んでいることが読み取れる。
都道府県別に見ると、人口が減少している地域でも、世帯数まで同じように減少しているとは限らない。大阪府、愛知県、福岡県、宮城県など、各地方の都市圏を抱える府県では、人口が減少する一方で世帯数は増加している。人口は「人の数」、世帯数は「暮らしの単位」である。両方を見比べることで、人口減少の中でも世帯のあり方が変化していることが見えてくる。
福島県の人口動態
福島県を見るための前提
福島県の人口動態を読む際、全国の都道府県と同じものさしだけで比較するのではなく県固有の前提を確認しておく必要がある。2020年から2025年の変化を見る場合、その5年間は東日本大震災と原子力災害からの復興過程、県内交通網の変化、そして地域ごとの人口移動が重なった期間であったことを把握しておく必要がある。
第一に、震災・原子力災害の影響を考慮する必要がある。国勢調査は調査時点で実際に住んでいる場所を基準に人口を把握する調査である。そのため避難している住民は、原則として令和7年10月1日現在に住んでいる避難先の市町村で調査される。浜通りの一部自治体では、住民基本台帳上の人口と国勢調査で把握される居住人口との間に差が生じやすい。この点は、福島県の人口を読むうえで重要な前提である。
第二に、福島県は地理的に一体の都市圏として捉えにくい県である。県内には会津・中通り・浜通りという性格の異なる地域があり、福島市、郡山市、いわき市、会津若松市など、複数の中心都市が分散している。したがって、県全体の人口増減率だけを見ても、地域ごとの変化までは見えにくい。沿岸部の復興、中通りの交通・産業集積、会津地方の観光や生活圏など、それぞれ異なる文脈の中で人口変化が生じている。
第三に、2020年から2025年にかけて、県内外を結ぶ交通網にも変化があった。常磐自動車道、磐越自動車道、東北中央自動車道などは、福島県内の地域間移動や、宮城・山形・栃木・首都圏との接続を考えるうえで重要な基盤である。交通網の整備は、居住地の選択、通勤・通学圏、物流、観光、復興事業などに影響する。人口増減そのものを交通網だけで説明することはできないが、地域ごとの動きを読む際の背景として無視できない要素である。
こうした前提を踏まえると、福島県の人口動態は、県全体の増減率だけでなく、地域ごとの条件の違いとあわせて読む必要がある。
福島県の結果概要:人口減少と世帯数の変化
令和7年国勢調査の人口速報集計によると、2025年10月1日現在の福島県の人口は1,711,937人である。2020年の前回調査では1,833,152人であったため、5年間で121,215人の減少となった。減少率は6.6%である。
世帯数は734,134世帯であり、2020年の742,911世帯から8,777世帯減少した。減少率は1.2%である。人口の減少率が6.6%であるのに対し、世帯数の減少率は1.2%にとどまっている。このことから、福島県でも、人口の減少と同時に、1世帯あたりの人数が小さくなる方向に変化していることがうかがえる。
ただし今回の人口速報集計から分かるのは、人口と世帯数の大枠である。年齢別人口、世帯類型、移動人口、就業状態などは、今後公表される詳細な集計を待つ必要がある。そのため、現時点では、人口減少の要因を断定するのではなく、福島県全体として人口と世帯数がどのように変化したのかを確認することが重要である。
福島県の結果を見る際には、県内の地域差にも注意が必要である。福島県は、会津・中通り・浜通りという性格の異なる地域を持ち、人口の動きも一様ではない。さらに、東日本大震災と原子力災害の影響により、浜通りの一部自治体では、国勢調査で把握される居住人口と住民基本台帳上の登録人口との関係を慎重に読む必要がある。
県全体では人口減少が進んでいるが、市町村単位で見ると、異なる動きを示す自治体もある。ここでは、大熊町、大玉村、西郷村を特徴的な例として取り上げる。
- 大熊町
令和7年国勢調査速報において、大熊町は人口増加率81.1%、世帯数増加率55.4%で、いずれも県内で最も高い増加率を示している(この増加は通常の人口増加とは異なる文脈で読む必要がある)。大熊町は原子力災害の影響を受けた自治体であり、避難、帰還、復興事業、新たな居住が重なりながら、人口が再形成されている地域である。 - 大玉村
避難地域12市町村を除いて見ると、大玉村は人口増加率0.5%で県内1位、世帯数増加率8.5%でも県内1位である。大玉村は東北自動車道の二本松ICと本宮ICの間に位置し、スマートインターチェンジの整備を進めている。工業集積拠点の形成、交通利便性の向上、定住促進を結びつけようとしている点に特徴がある。 - 西郷村
避難地域12市町村を除くと、西郷村は人口増加率0.2%で県内2位、世帯数増加率4.5%で県内4位である。新白河駅、白河IC、国道4号などに近く、県南地方の中でも交通条件に恵まれた自治体である。福島県内の自治体でありながら、白河都市圏、栃木県側、首都圏方面との接続性の中で人口動態を読む必要がある。
この3自治体はいずれも人口・世帯数の動きに特徴があるが、その意味は同じではない。大熊町は復興と帰還の文脈、大玉村は中通りの交通・産業立地、西郷村は県境地域の交通利便性という文脈を持つ。福島県の人口動態を読む際には、県全体の減少率だけではなく、こうした地域ごとの条件の違いにも目を向ける必要がある。
このように、福島県の人口動態は、県全体の人口減少率だけで説明できるものではない。県全体としては人口減少が進んでいる一方で、世帯数の減少幅は比較的小さく、さらに市町村ごとには異なる動きが見られる。福島県の現在地を考えるには、県全体の数値と地域ごとの文脈をあわせて読む必要がある。
使用データ
人口・世帯数データ:
総務省統計局「令和7年国勢調査 人口速報集計結果」
全国および都道府県別の人口・世帯数については、総務省統計局「令和7年国勢調査 人口速報集計結果」を使用した。
人口速報集計は、男女別人口および世帯数を早期に集計した速報値である。後日、調査票の記入内容に基づく審査を経て公表される確定値とは、必ずしも一致しない場合がある。
- 結果の概要:
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2025/kekka/pdf/outline.pdf - 結果の要約:
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2025/kekka/pdf/summary.pdf - 参考・利用案内:
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2025/kekka/sankou.html
福島県内の人口・世帯数データ
福島県全体および県内市町村別の人口・世帯数については、福島県「令和7年国勢調査速報(福島県の人口・世帯数)」を使用した。
福島県の資料では、県全体の人口・世帯数に加え、市町村別の人口増減率、世帯数増減率、避難地域12市町村を除いた場合の状況などが整理されている。本記事で取り上げる大熊町、大玉村、西郷村に関する記述は、この福島県資料に基づくものである。
- 福島県「令和7年国勢調査速報(福島県の人口・世帯数)」:
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11045b/kokusei2025sokuhou.html - 福島県「令和7年国勢調査 速報 -福島県の人口・世帯数- 調査結果・統計表」:
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/746211.pdf - 福島県「令和7年国勢調査 速報 -福島県の人口・世帯数- 表紙・調査の概要」:
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/746210.pdf
地図境界データ
都道府県境界データには、dataofjapan/land の japan.geojson を使用した。
- dataofjapan/land japan.geojson
https://github.com/dataofjapan/land/blob/master/japan.geojson - 地図境界データの直接URL:
https://raw.githubusercontent.com/dataofjapan/land/master/japan.geojson




