企業規模別 出産・育児退職者数推移から見る女性活躍の進捗状況:2014-2020年

はじめに

近年、日本社会において女性の活躍推進が重要な課題として認識されている。少子高齢化による労働力不足の深刻化、経済のグローバル化、そして多様性と包容性を重視する社会への変化など、様々な要因が女性の社会進出を後押ししている。

本レポートでは、総務省2022年度の「就業構造基本調査」を元にしたデータ「企業規模ごとの出産・育児を理由とした退職者の数(全国・男女)」を分析し、2014年から2020年にかけて、企業規模別に退職者数がどのように変化したのかを明らかにする。さらに、その変化の要因を、企業の取り組み、法律の制定、社会の変化、新型コロナの影響といった観点から多角的に考察し、女性活躍の進み方について検討する。

企業規模別退職者数の推移

【出典】総務省「就業構造基本調査」2022年度

全体的に、2014年から2020年にかけて、出産・育児を理由とした退職者数は減少傾向にある。特に、大企業(1,000人以上)においては、2017年を除き、2020年には顕著な減少が見られる。中小企業においても、変動はあるものの、全体としては減少傾向にある。

要因分析

上記で示したデータの傾向を生み出した要因について、企業の取り組み、法律の制定、社会の変化、新型コロナの影響といった観点から考察する。

企業の取り組み

近年、多くの企業が、従業員の出産・育児と仕事の両立を支援するための様々な制度を導入・充実させている。

  • 育児休業制度: 育児休業を取得しやすい環境整備や、男性の育児休業取得促進のための取り組みが進んでいる。厚生労働省の調査によると、2023年度の民間企業における男性の育児休業取得率は30.1%と、前年比で13.0ポイント上昇し、過去最高を記録した。しかし、男性の育児休業取得期間は「1カ月~3カ月未満」が最多で、3カ月未満の合計が86.1%を占めている。一方で、女性の育休取得期間は6カ月以上の合計が92.5%となっており、男女の格差は依然として大きい状況である。男性の育休取得期間が短い要因としては、職場での理解不足や、男性自身が育児休業を取得することに抵抗があるといったことが考えられる。
  • 短時間勤務制度: 育児中の従業員が利用できる短時間勤務制度の導入や、フレックスタイム制など柔軟な働き方を許容する企業が増えている。
  • 保育所設置: 企業内保育所や、近隣の保育所との提携など、従業員の子育てを支援する環境整備が進んでいる。

このような企業の取り組みは、従業員が安心して出産・育児と仕事を両立できる環境を整備することで、出産・育児を理由とした退職の抑制に繋がっている。特に、従業員500人以上の企業では、男性の育児休業取得率が高い傾向があり、それが退職者数の減少に大きく寄与している。

法律の制定

女性活躍推進に関する法律の制定も、女性の就業継続を後押しする大きな要因となっている。

  • 女性活躍推進法: 2015年に制定された女性活躍推進法は、企業に対し、女性の活躍推進のための行動計画の策定を義務付けている。この法律により、企業は数値目標を掲げ、女性活躍を推進するための具体的な取り組みを進める必要が生じた。
  • 育児・介護休業法: 育児・介護休業法は、従業員が育児や介護のために休業を取得できる権利を保障する法律である。2022年10月には改正法が施行され、育児休業の分割取得や産後パパ育休制度が新設されるなど、より柔軟な休業取得が可能になった。

社会の変化

社会における出産・育児に対する意識の変化も、女性の就業継続を促進する要因となっている。

  • 女性の就業率の増加: 女性の就業率は近年上昇傾向にあり、結婚や出産後も働き続ける女性が増えている。
  • 出産・育児に対する意識の変化: 男性も家事や育児に参加するべきだという意識が高まっている。
  • 家族の形態の変化: 「夫も家事や育児を平等に分担すべきだ」という意見への賛成割合は8割を超えている。

これらの社会の変化は、女性が働きやすい社会環境を形成することで、出産・育児を理由とした退職を減らし、女性の活躍を促進している。

新型コロナの影響

新型コロナウイルス感染症の流行は、女性の就業や出産・育児に様々な影響を与えた。

  • テレワークの普及: 柔軟な働き方が可能になり、仕事と育児の両立がしやすくなった。
  • 経済的な不安: 出産を控える、あるいは退職を余儀なくされる女性もいた。
  • 就業継続率の低下: 保育サービスの利用制限などが影響し、女性の就業継続率が低下した。

結論

本レポートでは、企業規模ごとの出産・育児を理由とした退職者数のデータ分析と要因分析を通じて、女性活躍の進み方について考察した。出産・育児を理由とした退職者数は減少傾向にあり、特に大企業でその傾向が顕著である。

企業の取り組みや法整備、社会の変化が女性の就業継続に大きく貢献していることが明らかになった。今後は、さらに柔軟な働き方の推進や男性の育児参加促進などが求められる。企業・社会・個人の意識改革を一層進めることで、より持続可能な働き方の実現が期待される。

関連記事

  1. 福島県の合計特殊出生率

  2. 全国の合計特殊出生率

  3. 福島県の出産環境

レポートカテゴリ